野球肘「離断性骨軟骨炎」
投球による肘傷害を総称して『野球肘』といいます。骨・軟骨や靱帯・筋腱付着部の傷害が含まれますが、部位により内側型と外側型に分類されます。『内側型』野球肘は内側靱帯・筋腱付着部の傷害や尺骨神経の麻痺が主体で長期的な経過は比較的良好ですし、投球しながらの治療も可能です。それに対して、『外側型』野球肘は発育期では離断性骨軟骨炎が中心となります。
離断性骨軟骨炎はまず上腕骨小頭【上腕骨の肘の先端部(親指側)】が橈骨頭【前腕の橈骨(親指側)の肘の先端部】に繰り返しぶつかることにより、その部位の骨が死んできわめて弱くなります。死んだ骨は当然治ろうとしますが、投球を続けることで圧迫力がかかり続けると、生き残った骨と死んだ骨との境目に骨のない隙間ができ、投球をやめただけでは簡単に治らなくなります。さらに、投球による圧迫が続けば、死んだ骨が軟骨とともにはげ落ち関節鼠となるのです。
離断性骨軟骨炎は、比較的若い時期すなわち小学生から中学生までに多く、11歳、12歳が発症のピークになり、痛みなどの症状が出現するのは14歳前後になります。その理由として肘の内側にある内側側副靭帯がまだ弱く、また靭帯の付着部も軟骨のまま完全な骨になっていないため外反力【肘の内側(小指側)が引っ張られ、外側(親指側)が圧迫される力】を支えきれず、外側の圧迫による障害がでると考えられています。
治療
初期の場合は、自然回復が見込めるため投球を禁止します。投球以外では、腕立て伏せや跳び箱、逆立ちなど肘に負担がかかることも同時に禁止します。リハビリテーションでは、投球禁止中に肩関節や肩甲骨の柔軟性改善や肩甲骨の周囲の筋力強化を行います。医師から投球が許可された場合、フォームの修正を行い段階的に復帰していきます。しかし、骨の成長が止まり、進行期や治癒の見込みがなくなった場合に手術適応となることがあります。手術は、膝から軟骨を採取し肘の傷んだ部分に移植する手術(骨軟骨移植術・モザイク形成術)を行います。約6カ月でスポーツ復帰となります。