鍼灸修行⑩気功体験
G鍼灸院で働いて4ヶ月ほど経った頃だろうか、先生から気功のやり方を教わった。
「気」については、勉強会でMさんに教えてもらっていたので、なんとなくは分かっていたが、はっきりとした認識はなかった。
先生に「まずは俺が見本を見せるから、そこに座りなさい。」
と言われ、私は椅子に座った。
先生は座った私の背中から腰にかけて1分くらいの気功をしてくれた。
それから「立ちなさい。」と言われ立つと
(え!むちゃくちゃ腰が軽い!まるで誰かにお尻を下から持ち上げてもらってる様に軽い。)
今思えば50年人生で、この時が一番軽かったと言ってもいいほど、この時はすごく軽かった。
先生に「すごく腰が軽いです!」と言うと、
「よし!それじゃあ、これをできるようにするからな。」と言われた。
「どうやって。。」
と戸惑っていたが、先生は丁寧にやり方を教えてくれた。
しかし教えてくれたが、急にできるはずもなく何度も「そうじゃない!」と言われ練習し、何とか合格点を頂いた。
それから数日後、鍼灸院にて突然
「高橋、今日から気功をやりなさい!」と言われ、言われるままに1日50〜100人くらい気功をした。
私も最初は自分自身が半信半疑でやっていたが、受けた人から「軽くなった。」とか「痛みが良くなった感じがする。」とか「高橋君の手は凄く熱くて手に何か付けてるの?」など言われ、徐々に自信もついていった。
気功をやるようになって、ある日こんな事があった。
私が気功をする箇所は、基本的に患者さんの主訴の部位なのだが、ある時、初診の患者さんがいて気功をする部位が分からなかった。
先生に「どこに気功したらいいですか?」と聞くと
「この患者は胆菅が悪いんだよ。そんな事も分からないのか!」と言われた。
(そうなんだ。胆菅に気功か。胆管はここら辺だっけ。)と、気功をやろうとすると患者さんが驚いた顔をして
「私の胆菅が悪いって何で分かったんですか?今日は腰の治療に来ただけで胆菅が悪いなんて一言も言ってません。私だって精密検査をして、この前やっと分かったんですよ。」
と言っていた。
私は「何で分かるんですかね、気で分かるって先生は言ったましたよ。」と言い気功をしたが、患者さんはとても感謝し喜んでくれた。たぶん先生の一言が大きかったのだろう。
そんな感じでG鍼灸院で、気功をやらせてもらっていた時期があった。
この時の気功体験は今の鍼灸に活きている。
鍼をする時は「気」を意識しながら施術をしている。
G先生は、ある時私に
「俺は、ただ気を追いかけているだけの人生だよ。気は極めれば極めるほど深くなっていくものだ。」
と、遠い目をしておっしゃっていた。
つづく。