整体狂時代(7)整体を学びに来ている人達
井本整体に通い出して何ヶ月か経つと顔馴染みも増えてきて、同期や先輩の素性も分かってきた。
当時の道場生は、柔道整復師、鍼灸マッサージ師、理学療法士、助産師、薬剤師、整体師などの医療系の人から、サラリーマン、主婦、フリーターなど様々な人が整体を学びに来ていた。
そして道場に入ってしまえば、医療資格は関係なく入門した順に先輩、後輩である。
私は井本整体に入門した時、すでに開業していて業界歴は15年ほどであったが、道場では半年前に入った素人でも先輩であり、その人から技術の指摘を受けていた。
私は普段、整骨院で患者さんから施術の指摘されることはないので、素人の先輩の厳しい指摘も一般の人の意見としてありがたく聞いていた。
道場ではペアになり練習することは前述したが、慣れてくると相性のいい先輩と悪い先輩がいることが分かった。
それは体の問題かもしれないし、性格の問題かもしれない。
私は比較的誰とでも良好な関係を築いていたが、それでも苦手な人は数人いた。
中に薬学部の年配の教授も整体を学びに来ていたが、なぜかこの人とは相性が悪く、この人と組むと上手くできなかった。
「全然取れてませーん」
「呼吸の誘導ができてませーん」
など言われ、そのうちにはやる前から、この人には無理だと思うようになった。
また、超過敏な先輩もいて手を触れただけで
「その触り方だめ。呼吸が苦しくなる。」
と言う人もいて、そういう人は苦手であった。
もちろん先輩の操法も受けるので、上手い先輩や下手な先輩もいた。
認定指導者の先輩と組む時も多々あったが、認定指導者の先輩はさすが素晴らしい技術を持っていた。
達人の先輩と組むと、観察している手が既に気持ちいい。
観察されたかと思うと、つかさず操法に入る。
的確に硬結を捉えられたかと思うと、呼吸を入れる間も無く次の硬結を捉えていく。的確に次々と硬結を捉えられるとなんともいえない快感がある。
何回か書いたが、上手いは人ほど技術が早い。下手な人ほど遅い。
整体の究極は呼吸の誘導である。
術者の意のままに受け手の呼吸を操る。
緊張と弛緩。
「間」伸びした技術は、間抜けなのだろう。
「機」「度」「間」
操法の要諦はこれに集約される。