膝靭帯損傷
膝靭帯損傷は、急速にストップやターンを繰り返すスポーツや衝突の激しいスポーツ(コンタクトスポーツ)などを行うときや交通事故にあったときなどが挙げられ、膝に大きな力が加わったときに起こります。
急性期(受傷後3週間くらい)には膝の痛みと可動域制限がみられます。しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。急性期を過ぎると痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。これは下り坂やひねり動作の際にはっきりすることが多いです。
不安定感があるままに放置しておくと新たに半月板損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現します。
力のかかり方や、力が加わった方向によって、損傷する靭帯が異なります。一般的には、以下のような力が加わることで、それぞれの靭帯が損傷します。
膝の外側から力が加わったとき:内側側副靭帯(MCL)損傷
膝の内側から力が加わったとき:外側側副靭帯(LCL)損傷
膝の骨の上端(脛骨上端)の前内方へ力が加わったとき:前十字靭帯(ACL)損傷
膝の骨の上端(脛骨上端)の後方へ力が加わったとき:後十字靭帯(PCL)損傷
大きな力が加わると、複数の靭帯を同時に損傷することもあります。この4つの靭帯のなかでもっとも多いのは、内側側副靭帯とされています。
外側側副靭帯を単独で損傷することは非常に稀です。
診察では膝関節に徒手的にストレスを加えて緩みの程度を健側と比較します。緩みの程度を数値で評価できる専用の機器もあり、これを用いると診断の精度は高まります。
画像診断ではMRIが有用です。X線(レントゲン)写真では靭帯は写りませんがMRIでは、はっきりと描出できます。半月板損傷合併の有無も同時に評価できます。
膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。
内側側副靭帯損傷では多くの場合保存的に治癒しますが、前十字靭帯損傷ではその可能性はかなり低くなり手術を選択することが多くなります。後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いことから、先ずは保存療法を試みるようにします。