腰痛高校生⑨最高のギフト
父の紹介で行った鍼灸院では12月の寒い中、パンツ一丁で1時間近く待たされ治療は受けたものの怒りながら帰ってきた。
しかも、鍼治療も問診もなく少しお腹を触っただけで鍼を打たれ先生と交わした言葉は一言だけであった。
そんな鍼灸院から帰って1日が終わり「変な鍼灸院だったなー。」と思いながらその日は寝た。
しかし次の日、起きてみると
「えっ!腰が全然痛くない!!」
「全く痛くない!」
2年半以上痛かった腰痛が、たった1回の鍼で痛みが全く無くなってしまった!
「信じられない!」
「どうして?すごい!」
昨日は二度と行くもんか!と思っていたのに痛みがなくなり、またあの鍼灸院に行かなければ!と思った。
そして次の週に鍼灸院に行った。
先生に
「どこに行っても治らなかった腰痛が治ったんです。ありがとうございました!」
と興奮気味に言った。
先生は、さも当然と
「良かったですね。もっと良くなりますよ。」と一言言っただけであった。
(カッコいい!渋すぎる!)
え!でも、もっと良くなる?どういう事?
先生の言った意味が分からなかったが、それから週に一回通うようになった。
腰は1週間経つと痛くはないが少し重い感じがした。しかし鍼を打ってもらうとすごく体が軽くなった。
それからなんと実に3年間、その鍼灸院に通った。後半は鍼灸院で週に一度の気功体操会があり、それに参加して鍼も受けていた。
高1から痛かった腰痛は高3の12月にその鍼を受けてから50歳になった今までほば痛くない。1回だけ引越しの時、荷物を持ち過ぎて痛くなったがそれもすぐに治った。
私の高校生活はほば全て腰痛だった。
病院では検査の結果「異常なし」で、腰痛さえ認めてもらえず絶望した。
いろんな治療を受けたが良くならず将来に希望も持てず暗い高校生活であった。
今考えると、高校時代の腰痛は何だったのだろう?
つらかったが腰痛になり何人もの治療家と出会った。様々な治療法を受けた。
腰痛に悩む患者さんの気持ちも痛いほど分かった。治らないつらさも知った。
そして最高の鍼灸師の先生に巡り合った。
『腰痛は何だったのだろう?』
治療家となった今だから思えることがある。
本当につらい腰痛にならなければ患者さんの気持ちは分からなかっただろう。
腰痛になって様々な治療を本気で受けなければ、その良さも悪さも効果も分からなかっただろう。
いくら本を読んでも学校で習っても自分の体で体験しなければ本当のつらさ、治った喜び、患者さんの気持ちは分からない。
高校時代の治らない腰痛は、
治療家になるため、
様々な治療を体験するため、
患者さんのつらさを知るため、
最高の鍼灸師に出会えるため、
私に与えられた最高のギフトだった事に最近になってやっと気がつく事ができた。
腰痛に感謝!
腰痛高校生『完』