治療家への道④G鍼灸院
「将来、鍼灸をやろう!」と決め、G鍼灸院の先生に相談したのだが、「やめたほうがいいよ。」と言われながらもG鍼灸院に見学に行く事になった。
G先生に「うちに勉強に来てみれば?」と言われ嬉しくなり、大学の空いた日に早速行った。
それまで患者として通っていたので鍼灸院の雰囲気は分かっていたが、実際見学してみると患者さんがとても多くて圧倒された。
患者で行った時はもちろん男性の部屋しか入れなかったが、他に女性の部屋が2つあり、全部でベットが30台ほどあった。
鍼灸院の広さは約30坪ほど、広いコンビニくらいあった。
そこでG先生は仰向けの患者さんに鍼を順々に打っていく。10分くらいしたらスタッフが鍼を抜いて、患者さんはうつ伏せになり、また先生が鍼を打っていく。また10分くらいしたら鍼を抜いて、吸い玉をしたりお灸をしたりいろいろしていた。
G鍼灸院には1日150〜200人ほどの患者さんが来ていた。
そして全ての患者さんにG先生が一人で鍼をしていた。
他の鍼灸院を見たことが無かったので「鍼灸院てこんな感じなのかなー」と思ってたが、この業界のことを知るとG鍼灸院の患者の多さは特別であることが分かった。
鍼灸の業界誌で1日80人に鍼をしているという鍼灸師を見たことがあるが、200人はケタ違いである。
G先生が鍼を刺す時間は見ていると1人20〜30秒ほどであった。
それくらいでないと30台もあるベットをまわれない。
1人30秒✖️30ベットで15分。10分くらいして鍼を抜くとちょうど良くベットがまわるのである。
しかしこれは凄すぎる。
鍼灸師になって自分で鍼を打つようになって初めてG先生の驚異的なスピード、技術の凄さが分かった。
今、私は1人2〜3分くらいで鍼を打つが、遅い鍼灸師は15分はかかる。
時間をかければ丁寧で良いと思うかもしれないが、逆である。上手い鍼灸師ほど短時間で的確に鍼を打つ。
下手くそほど遅く的も外れている。
後に井本整体の練習で何十人もの整体を受けるが、熟練した達人ほど瞬時に反応点を見つけ的確な技術を行う。相手の呼吸さえコントロールする。
逆に下手な人ほど、ツボを探すのに時間がかかり、そのわりにポイントもズレて全く効かないのである。
G鍼灸院の最初の見学をして、それから何回か見学をさせてもらったが、やはり鍼灸師になりたいという気持ちは変わらず
「G先生のところで勉強させて下さい!」
と申し出た。
しかも、私はすっかりその気になっていて
「大学を辞めて鍼灸院で勉強します!」まで言うと、G先生は冷静に
「大学は卒業しなさい。一度決めた事を中途半端で辞めるのは良くない。」と諭された。
G先生に諭され、それから大学に行きながら鍼灸院でバイトすることになった。弟子入りという形であった。
ちなみに大学の法学部は試験一発勝負の科目が多かったので、それからほぼ大学は行かずに鍼灸院で過ごすことが多くなった。
治療家への道 『完』