鍼灸修行(13)気の博物館
秋頃だったと思うが、G鍼灸院で患者さん、スタッフの総勢80人ほど、大型バス2台で栃木県にある「気の博物館」に日帰りで行った。
当時は何も考えずにただ旅行を楽しんでいたが、今考えれば鍼灸院でバスツアーを開催するなんて凄いことたと思う。
しかも総勢80人ほどが参加し大型バス2台で行くなんて聞いたことがない。
行き先は「気の博物館」だったが、創設されたのは藤平光一氏である。
藤平光一氏はご存知だろうか?
藤平 光一(とうへい こういち、1920年1月20日 – 2011年5月19日[1])は、東京生まれ栃木県出身の日本の武道(合気道)家。心身統一合氣道の創始者。1969年(昭和44年)合氣道10段。現一般社団法人心身統一合氣道会会長の藤平信一は息子。
であるが、有名なのは世界の王貞治氏に一本足打法を指導し、また当時の巨人軍も指導されていたことだ。
※藤平光一氏に興味ある人は本が何冊も出てるので、そちらをご覧になって下さい。
実際、藤平光一氏がどんな指導をしていたかというと、バッターで構えた際
①肩の力を抜く
②臍下丹田に気をこめる
③重心は全て下に置く
の3つを意識する。
解説すると
①肩の力を抜く
これは上半身は完全に力を抜くということ。上半身が力んでいると体は固くなり上手く動かない。
②臍下丹田に気をこめる
臍下丹田とは臍の指3本ほど下と仙骨を結んだあたり。そこを意識するということ。
これは今風にいえば、ドローインである。
ドローインとは、スポーツ選手が体幹を安定させるために腹部の深層筋(腹横筋)を常に緊張させるやり方であるが、藤平光一先生はドローインが一般的になるかなり前にその重要性に気がついていたのである。
③重心は全て下におく
例えば腕でも意識は下に置く。足でも意識は下。下に置くことで筋肉の力みを無くすのだ。
このやり方は、現代においても全てのスポーツ、格闘技などの重要事項ではないだろうか?
私は仕事でマッサージをするが、マッサージにおいてもこれは重要だと思う。
マッサージする時、自分の力みは相手の緊張につながる。
相手が緊張し表層の筋肉が張っていると、奥の硬結に当たらない。
また、力んでいると自分も疲れる。
マッサージしていて疲れるという治療家がいるが、まだまだ修行が足りないのだ。
マッサージしていて自分の腰が痛いとか、手首が痛いのも体の使い方を間違えている、変な力が入っているのだ。
私は1日9時間くらいマッサージする日もあるが、全く疲れない。もちろん手は抜いてない。
仕事後にスイミングレッスンで1500mほど泳ぐ。
30年間働いていてどこも痛くない。
何の職人でもそうだと思うが、本当のプロは簡単そうに、さらっとやるものである。
体の使い方ができているのである。
さて、G鍼灸院で行った「気の博物館」併設の合気道の道場で、まだご存命であった藤平光一先生のお話も聞けた。
肘のデモンステレーションも披露してくれた。
肘を曲がらないように力を入れた状態で、誰かに曲げさせる。
力で曲がらないように耐えた場合は強い力を加えられると曲がってしまうのだが、肘を伸ばし「腕から気が出ている」と強く意識すると、どんなに強い力で曲げられても曲がらないのだ。
「これが気の力です。」と藤平光一先生はおっしゃっていた。
世界の王貞治さんに一本足打法を指導した先生の言うことである。やってみて下さい、面白いですよ。
帰りのバスでG先生に「高橋、司会をやりなさい。」と言われ一日のまとめを任されたが、口下手な私は上手くできずに結局G先生がやっていた。
「気の博物館」は今もあるのだろうか?
私が行ったのは、もう30年も前になる。
つづく。