鍼灸修行(14)硬気功
「気」の博物館に行った後の頃だったと思うが、G先生は硬気功に凝っている時期があった。
硬気功とは武術気功とも言い、武術で使われる気功である。
合気道も武術気功を使っていると思われるが、私は合気道はやったことはないので詳しくは分からない。
G鍼灸院では、休憩時間や仕事後にG先生がスタッフに硬気功を行い、スタッフを飛ばしていた。
私も受けたが、受けると後ろに引っ張られる感覚があり自然と体が後ろにもっていかれてしまう。
私も硬気功のやり方をG先生に教わった。
通常の治療の気功は手をあてて「気」を相手の体に浸透させるように行うのに対し、硬気功は自分の中で「気」を溜めて息を一気に吐くのと同時に一点に気を集中し相手にぶつける。
私は友人などにやってみたが、効果が出る人と出ない人がいたが、正直、硬気功はよく分からなかった。
治療気功の方が私に合っていた。
そんなある日、G先生はいつものように仕事後に硬気功をやっていたが、その日は未体験の受付さん(女性35歳くらい)にやった。
受付さんは「怖い、嫌だなー」と恥ずかしがっていた。
私が3mほど後ろに立ち、後ろに倒れてくるのを受け止めるために構えていた。
通常、硬気功は受けると後ろに後退りしながら倒れるので、少し離れた後ろで受け止める人が待っている。
いざ!G先生が受付さんに硬気功を行うと
「あっ!」
一瞬の出来事だった。
受付さんは、後退りしないでその場で回転したように倒れ、頭を床に強打してしまった。
ひとりバックドロップ状態である。
一瞬のことで私も何できないでいた。
受付さんは頭を強打し意識がもうろうとしていた。
その後、病院で検査をしたらしい。
とくに問題なかったが、この事件以来、硬気功はやらなくなった。
そんな武術気功だったが、実際の格闘には使えるのだろうか?
私は本格的にやってないので大きな事は言えないが、実際の格闘には難しいと思う。
塩田剛三のような伝説の武術家になれば可能なのかもしれないが。
つづく。