鍼灸修行(21)灯火(ともしび)
柔道整復師の専門学校にも合格し、来年からは柔整学校1年生、夜間の鍼灸学校3年生になる。また大学はなんとか卒業できそうな見込みができた。
柔整の学校に行くようになると大学のようにテスト一発勝負とはいかないので、午前中は柔整学校、夜は鍼灸学校となりG鍼灸院では働けなくなってしまった。
思えば高校3年間痛かった、どこに行っても治らなかった腰痛を治して頂いてから約5年間、患者として、弟子としてG先生にはお世話になった。
鍼灸について、また人を治療するということについて全く無知った私にいろいろ教えて下さった。
G先生は鍼治療に人生をかけ情熱を注いでいた。
治療家なら治療に熱心なのは当たり前だと思うかもしれないが、この業界に入ると意外と治療に情熱がある人が少ないのが分かる。
向上心を持って学び、患者さんを第一に考えて仕事をしている人は1割程度ではないだろうか?
ほとんどの治療家は惰性で治療をしている。日々、向上心を持って勉強している治療家は一握りしかいない。
もちろんG先生は治療に心血を注ぎ、常に新しいことをチャレンジしていた。
私はG先生に鍼灸の技術も教わったが、技術以上に治療家のあるべき姿を先生の日常から教わった気がする。
縁あってG先生と出会い鍼灸の素晴らしさを経験させて頂いた。G先生と出会わなければたぶん鍼灸はやってなかっただろう。
私の人生は別の方向に向かっていた。
しかし、G先生と出会い治療家の道を歩んで良かったと思う。
G先生の治療に対する情熱はG先生の人生そのものであった。
その情熱はいつしか私の心にも燃え移り、30年経った今でも消えることない。
G先生から受け継いだ情熱は、私の生涯の灯火となり私の人生をこれからも照らし続けてくれることだろう。
鍼灸修行編 『完』