膝蓋靭帯炎
膝蓋靭帯炎とは別名ジャンパー膝と言われる。ジャンパー膝とは名前が示すごとく、バレーボールやバスケットボールなどでジャンプや着地動作を頻繁に行ったり、サッカーのキック動作やダッシュなどの走る動作を繰り返したりするスポーツに多くみられる、オーバーユース(使い過ぎ)に起因する膝のスポーツ障害で、12〜20歳。特に10代の男性に多く、大腿四頭筋の柔軟性低下が要因の1つに挙げられます。特に成長期の長身選手は、骨の成長に筋肉の成長が追いつかず、結果的に筋肉が硬い状態を招いた結果、その負担が末梢の膝蓋骨周辺に蓄積するために起こる慢性障害です。
ジャンプやダッシュなどによる膝関節の屈伸動作を頻繁に、かつ長時間にわたって行う場合、膝の伸びる仕組み(大腿四頭筋が引っ張られることで膝蓋骨、膝蓋腱、脛骨粗面にまで牽引力が加わる)に過度な牽引力が繰り返し加わることで、膝蓋骨周辺に微細損傷を引き起こします。病態は腱実質部に出血、浮腫、ムコイド変性(結合組織の粘液変性)、フィブリノイド変性(線維素様のものが組織に沈着して組織傷害や炎症を引き起こす)などの変化をきたし、微少断裂や、最重症例ではまれに完全断裂に至ります。
運動時に発生する膝前面の疼痛と圧痛、局所の熱感、腫脹を伴います。重要な所見として、腹ばいにして膝を曲げると、大腿前面の突っ張ったような疼痛から逃れるために尻上がり現象が出現します。膝蓋骨下部から膝蓋腱付着部(約7割)、膝蓋骨上部から大腿四頭筋腱付着部(約2割)、膝蓋腱中央部から脛骨粗面付着部(約1割)です。
治療としては、
疼痛の程度によって治療が異なるため、病期を4段階に分けます。最近では予防、再発防止用に装具の使用が勧められています。
①運動後に疼痛が生じる場合は、大腿前面のストレッチと局所の練習後のアイシングを徹底する。サポーター装具をつける。
②運動前後に疼痛が現れる場合は、上記に加えてジャンプ動作の休止、膝と股関節を中心とした下肢の運動療法と局所のアイシングを行う。
③運動に支障をきたす疼痛では、月単位での運動休止と下肢の筋肉のバランス改善を目的としたストレッチングを行い、疼痛が消失してからトレーニングを再開する。
④断裂例では縫合手術が必要である。