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上腕二頭筋は力こぶを作る筋肉で、肩甲骨の関節上結節と関節唇(肩関節の中)から始まり結節間溝という溝を通り、肘に向かって走行を変えます。この結節間溝は、上腕骨前面の最も肩関節に近い部分にあります。
上腕二頭筋長頭腱炎は中年以降に多く見られる肩のけがで、腕を使うことの多い職業や、重いものを持ち上げた時に発生します。
肩が激痛で動かすことができなくなるので、五十肩と勘違いしてしまうこともありますが、五十肩はじわじわと時間をかけてなるもので、突然腕が上がらなくなることはありません。
上腕二頭筋長頭腱炎には 腱の炎症のみ・部分断裂・完全断裂 の3タイプがあります。
上腕二頭筋長頭腱が結節間溝という、肩の骨のくぼみで負荷によって起こった炎症や、腱の断裂が原因です。
・急に腕が全方向に上がらなくなった
・肩の前に触れるとピンポイントの痛みがある
・肘を曲げると、二の腕の力こぶの形が短い
これに該当すると、上腕二頭筋長頭腱炎の可能性が高いです。
腱の完全断裂の場合は力こぶを作った時に、健康な腕の力こぶと比べて長さが短くなり、肘の近くでこぶになり明らかに形が違うので判別が簡単です。
治療
上腕二頭筋長頭腱炎の治療には、初期は冷却と安静が必要です。腕はアームホルダーで吊っておくと痛みが楽になります。
上腕二頭筋長頭腱炎は激痛を伴いますが、予後は比較的良好で手術になるケースは少ないです。
手術は腱の完全断裂が肩付近ではなく、肘付近で起こった際に行うことが多いですが、肘付近での断裂は非常に少ないため手術になるケースは稀といえます。
完全断裂した腱は縮んだ状態から伸びて治ることはないため、縮んだ状態で治ります。
そのため見た目に問題を残しますが、機能的には上腕二頭筋は長頭と短頭があるため、長頭をケガしても短頭が支えてくれるため筋力の激減はしません。
炎症のみの場合は完治までに1~1.5カ月ほど、完全断裂でも3カ月後には通常の力仕事が可能になります。
胸郭出口症候群とは、上腕や肩の運動や感覚に深くかかわる神経や動脈が障害を受け、肩、腕、手のしびれや痛み、手の動かしにくさなどを自覚するようになる状態です。肩こりとして自覚されることもあります。
胸郭出口症候群はなで肩の女性に多くみられますが、筋肉を鍛えた男性に発症するタイプもあります。発症には日常生活に関連した動作にも関与していることから、規則正しい健康的な生活スタイルを確立することが重要といわれています。自覚症状が強いにも関わらず、周囲に理解されにくく、当事者が困惑することもある病気のひとつです。
原因
首には食道や気管、神経や血管、筋肉など多くの組織が密集しています。腕を司る神経や血管は、胸郭出口と呼ばれる部分を通って、首から目的地である腕に向かって走行しています。胸郭出口を通過する重要な神経として腕神経叢があります。また、主要血管として鎖骨下動脈や鎖骨下静脈があります。
胸郭出口にはいくつかの物理的に狭い空間が存在しており、こうした場所で神経や動脈が圧迫されることがあります。神経や動脈が胸郭出口で圧迫されることで、胸郭出口症候群が発症します。胸郭出口の狭窄部位としては、3か所知られています。
首から腕に向かって順に、以下の通りです。
- 斜角筋と呼ばれる首の筋肉で構成される部分
- 鎖骨と肋骨の間
- 胸の筋肉である小胸筋と肩甲骨との間に構成される部分
こうした狭窄部位で神経や動脈が圧迫を受ける可能性が高く、それぞれ斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群といった名称がつけられており、これらを総称して胸郭出口症候群といいます。
神経や血管が物理的な圧迫を受けて生じる胸郭出口症候群ですが、なかには、頚肋と呼ばれる先天的な肋骨の遺残物が原因となって発症することもあります。頚肋が存在すると、腕神経叢や鎖骨下動脈がより一層圧迫を受けやすい状況になるため、胸郭出口症候群が発症します。
胸郭出口症候群は長時間、悪い姿勢で座っていたり、睡眠不足やストレスなどが重なったりすると発症しやすくなるとも考えられています。また、なで肩であることや、重いものを持つ習慣も発症に関連します。
症状
胸郭出口症候群は、いわゆる肩こりとして自覚されることがあります。腕や手に分布する神経や血管が圧迫されることで発症するため、神経症状として首や肩、腕にしびれやちくちくする感覚、刺すような痛みを覚えることがあります。
神経症状はさらに手先や体幹にもみられることがあります。神経障害が持続すると、筋力の低下もあらわれ、それに随伴して運動機能にも影響が生じます。具体的には、手の握力の低下、巧緻性の低下(指先が不器用になる)などです。
血管の症状としては、血行の悪化から皮膚が白くなったり、青紫色になったりします。血行障害で痛みや感覚障害が誘発されることもあります。
四十肩・五十肩とは、正式には「肩関節周囲炎」という疾患群のこと。原因は完全に明らかにはなっていませんが、加齢により血液循環が悪化したり、筋肉、腱などの性質の変化が起こったりすることで、肩の周辺組織が炎症を起こして腫れや痛みが生じる疾患です。40~60代の人に多く発症するため、この名称が付けられました。最近では、生活環境の変化などで、30代で症状が出る方も増えているとも言われています。 四十肩・五十肩と混同されやすい肩こりは、「筋肉の疲労」からくるものであり、全く違うものです。
『四十肩・五十肩』の3つの病期
四十肩・五十肩には発症してから痛みが主な「急性期」、肩の可動域が狭まる「慢性期」、回復に向かう「回復期」と3つの病期があります。
急性期(およそ2週間から1カ月)
突然腕を動かしたときに肩に激痛が走るというのが、四十肩・五十肩の典型的な発症パターン。
この時期は夜に寝返りを打つだけで痛みを生じる「夜間痛」や、肩を動かす際に二の腕や手先にも痛みや痺れが伝わる場合もあります。こういった急激な痛みは数日間で治るのが一般的ですが、無理は禁物!安静が第一の大切な時期です。
慢性期(半年から1年)
急性期の痛みが治まってくると、鈍い痛みへと変わり、肩が上がり難くなるなど可動域がだんだんと狭くなってきます(肩関節拘縮)。これは急性期に起きた炎症の影響で、筋肉が委縮して固くなっているから。着替えや洗髪が上手くできないなどの日常生活に支障をきたす時期でもあります。慢性期は半年から1年続くこともあり、痛みを感じない程度の適度なストレッチも有効です。しかし、痛みが減ったからと言って無理をすると、痛みがぶり返すことがあるので要注意です。
回復期
肩関節拘縮が改善してきて、少しずつ腕が動かせるようになる大切な時期。痛みはほとんどありません。しかし、人によってはこの時期になっても「肩の動きが非常に悪い」ということも。適度なストレッチなどで、徐々に肩を動かしていきましょう。
痛みの緩和とケア方法
急性期
- 三角巾やアームスリングを用い、できるだけ肩を使わないように安静にしましょう。痛みを感じるような動作は避けてください。
- 患部が熱を持っているようなら、氷水などで冷やして炎症を抑えます。
- 痛みがひどい場合は、鎮痛消炎成分インドメタシンなどが配合された外用薬や飲み薬も有効です。
慢性期
- 就寝前に入浴して肩を温めたり、ホットタオルを肩に広げて乗せて温めます。出来るだけ肩や体を冷やさないように注意しましょう。
- 血流をよくするストレッチなど、無理のない範囲での運動を続けましょう。
ただし、痛みがひどいときのストレッチは炎症を悪化させる可能性があり危険ですので控えてください。
回復期
痛みがほとんどなくなり、リハビリに最適な時期。ここで可動域を広げる運動を怠ると、四十肩・五十肩が治ったあとも肩関節の動ける範囲がだんだん狭くなってしまうこともありますので、ラジオ体操や簡単なストレッチなど、慢性期以上に肩を動かすことを意識して、しっかりリハビリを行いましょう。
肩腱板とは、肩甲骨と腕の骨(上腕骨)をつなぐ板状の腱で、腕を上げたり下げたりするときに、上腕骨頭が肩甲骨の関節窩という面とずれないように保つ、つまり肩関節の支点を保つ動きがあります。
腱板は、肩関節を安定させ動かすために重要なものなので、損傷や断裂によって、引っかかりなど、肩の動きに支障が出たり、痛みが生じることがあります。肩腱板断裂は、特に腱の老化が始まる40歳以上の人に多く見られます。
中高年者の肩痛の原因として多い疾患に、五十肩があげられます。五十肩は肩関節の動きが大きく制限されるという特徴がありますが、肩腱板断裂では関節の動きがあまり制限されないことが多く、腕の上げおろしで痛むという特徴があります。
怪我の原因
肩腱板断裂の原因は「急性断裂」「変性断裂」の二つに分かれます。
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- 急性断裂転んだり、重いものを持ち上げたときなど、外傷によって一気に断裂が起こることがあります。変性断裂多くの場合、肩の使いすぎによる腱板のすり減りや、年齢を重ねるにつれて起きる腱板の老化によって断裂が生じます。野球やテニスなどの肩を使うスポーツを長年やっていたり、洗濯物を干したり、布団の上げ下ろしなどの家事も原因になる場合があります。
肩腱板断裂の主な症状
- 肩を上げ下ろしするときに、痛みや引っ掛かりがある。ゴリゴリという音がすることもある。
- 反対の腕で痛い方の腕を持ち上がれば上がるのに、自力で持ち上げようとすると、痛くてできない。
- 転んだり、腕をひねったりなどの、症状の出るきっかけとなる外傷があった(外傷がない場合もある)。
- 特に運動時や夜間に肩が痛む。
急性断裂の場合、断裂音とともに痛みが走り、腕が持ち上がらなくなります。2、3週間痛みが続きますが、徐々に落ち着きます。
これらの症状は、四十肩や五十肩と似ており、安静にしていると痛みが落ち着くことがあるので、治療せずに放置してしまう人が多くいます。